2009年4月29日水曜日

ノルウェイの森

20年前の大ベストセラー、社会人1年生のときに読んだ小説を20年ぶりに読み返してみた。生と死、セックスと愛についての物語である。物語の中で主人公のワタナベ君は、親友を自殺で失うのだが、初めてこの物語を読んだ24歳のとき、僕自身がその10数年後に、まったく同じ体験(親友の自殺)をすることになるとは夢にも思っていなかった。人生はほんとに何が起こるか分からない。喪失からの再生。それは失ったものを取り戻すということではなく、もう取り戻せないということを受け入れて、それでも生きていくことを是とするか否かの問題なのだとこの小説を読んで思った。20年前はそんなことを考えもせずにこの物語を読んだのだろうと思うが…。

20歳の頃、好きになった女の子に「女が20歳超えたら結婚を前提としないで男の人と付き合うことはできない」と言われたときは、心底驚いたものだ。純粋な恋愛のひとつの結果として、結婚があるというのは理解できたが、恋愛の「前提」に結婚があるというのが、その頃の僕には全く受け入れがたいことだったのだ。恋愛に「前提」があるっていうのが、人間としてすごく不純な感じがしたのだ。それから、少しだけ大人になって今の嫁さんと出会った。根本的な恋愛観は変わっていなかったが、その一方で最初から結婚を意識していた。2年半つき合って結婚した。それから15年たったが、まずまず円満である。(向こうは、いろいろ不満もあるだろうが、こっちは特に不満はない。)すっかりおっさんとなった今日この頃では、恋愛観なるものは、心のずっと奥底の方に埋もれてしまっていて、めったなことで表面に出てくることはないが、でも愛について思うところの根本的な部分は変わっていないような気がした。20年の時を経て、この小説を読み返してそんなことを感じた。小説を読むという行為はそれ自体人生を豊かにするよね。読書は楽しい。

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